メルカリを退職してCloudbase株式会社に転職しました

はじめに

こんにちは。 @0meo です。

2022年12月でメルカリを退職し、2023年1月よりCloudbase株式会社に転職しました。 この記事はメルカリの退職・Cloudbaseの入社エントリになります。

メルカリでやったこと

メルカリに入社するまでのお話はこちら。

meokz.hatenablog.com

1. GroundUp App プロジェクトへの参加

メルカリでの主な仕事は、メルカリアプリの0からフルスクラッチプロジェクトへの参加でした。

mercan.mercari.com

2年半に渡る大規模なプロジェクトのうちお手伝いさせて頂いたのは後半の半年ほどです。MAU2000万人規模の開発を行う上での組織作りや開発プロセスなど、短い時間ながら多くのことを学びました。

Design Systemを始めとした共通モジュールやアーキテクチャは既に整備されており、ほとんど土台が出来上がっていたので属人的な貢献が大きくできたわけではないのですが、歴史が長いサービスなだけあって技術負債を解消したとしても "仕様負債" が無いとは言わざるを得ませんでした。特に自分が面した問題は、単一の機能自体の仕様書があるにも関わらず、複数の機能同士が関与しあう際の仕様について統一的な文書が存在せず、かつ新たな機能が追加される際に機能数Nの指数的にコードが複雑になってしまうというものでした。これを解消するために、いくつかのチームを横断しながら仕様を紐ほどいていくことに責任を持たせて頂き、複数の機能が絡み合ったときのフローを1つの文書に整理しました。加えて、技術的にも仕様変更に強くなるようなマネージャーモジュールのPoCを作成し、アーキテクチャチームに提案させて頂きました。この過程で得られたコミュニケーションや、アーキテクチャチームの方からのコードレビューは貴重な経験になりました。

↓ 快適・高速な開発を支えるメルカリiOSのビルドシステムについて engineering.mercari.com

2. 登壇発表

@kuu に声をかけて頂き2件の登壇発表を行いました。メルカリで学んだ開発プロセスについて発表をしています。

www.youtube.com

スライド: speakerdeck.com

confengine.com

3. 社内ハッカソンでの優勝

メルカリでは通常業務をストップし、好きなアイディアを元に自由なアプリを作ることができる社内ハッカソンがあります。基本的にメルカリでの仕事は「競争」ではなく「強調」なのですが、唯一競争的なイベントとして個人で出場し、社員274名が参加するハッカソンで優勝に該当するGold Awardを頂きました。

engineering.mercari.com

自分がメルカリを使っているときの不満として、モノを売る際に郵送方法が毎回分からなくなるという問題があります。そこでiOSの3次元計測SDKをメルカリに統合し、出品物をスキャンすることで最も安い郵送方法を自動入力してくれる機能を追加しました。

https://storage.googleapis.com/prd-engineering-asset/2022/12/e21fc81c-presentation3-1.gif (engineering.mercari.com より引用)

フルスクラッチを経たメルカリiOSでは、このような機能を爆速で作ることができます。

Cloudbaseへ

メルカリでやり残したことはまだあったと感じているのですが、Cloudbaseに強い魅力を感じて転職するに至りました。

Cloudbaseは、AWSを始めとするクラウド環境をスキャンすることで致命的なインシデントに繋がりうる設定ミスを検出し、日本語による修正ドキュメントを添えてリスクを提示してくれるサービスです。

(cloudbase.ink より引用)

たかが設定ミスと侮ることなかれ。自動車会社ホンダのインド子会社では、S3の設定を誤って「公開」にしていたために5万人以上の顧客データが流出しています。

gigazine.net

古典的なネットワーク・アプリケーションを介した攻撃やマルウェアと異なり、このような「S3の設定に問題があった」のようなクラウド環境に起因するインシデントが増加傾向にあります。これを解決するのが CSPM (Cloud Security Posture Management) であり、Cloudbaseが提供するサービスのうちの1つです。

同じくCSPMを提供するイスラエルのWizは、2020年1月の立ち上げから既に1億ドルまで年間売上を伸ばしており、時価総額でも約8000億円に到達するなどCSPMは熱い領域であると言えます。

soi-ri.jp

海外と比較すると日本のセキュリティは遅れがちと言われますが、やはりCSPMに関しても日本ではプレイヤーがほとんどいません。現代における国家間の戦争では武力行使に連動してサイバー攻撃が行われることが周知の事実となっているように、CSPMを国産として展開すること、これを普及させることによって日本全体のサイバーセキュリティを守ることには強い意義があります。

Cloudbaseはリリースからまだ1年すら経っていないにも関わらず、主にエンタープライズ向けのお客さまに多くご導入頂いており、フィードバックを頂きながらプロダクトを改善し続けているところです。

転職を決めるまで

代表の岩佐 @koyataroo とは96年生まれの同世代であり、自分が起業した2年前頃からTwitterで相互フォローして認知する関係でした。2022年の秋頃に初めてお話することになり、意気投合したのをきっかけにCloudbaseへの転職を考え始めます。

岩佐を始めとした経営陣のことが信頼できる、エンジニアが各メガベンから集まったドリームチームである、セキュリティ分野なのでエンジニアのキャリアとして無駄になりづらい、国産セキュリティサービスをやる意義がある、必ず海外に進出するという野心的な目標があるなど、様々なポジティブな理由はありますが、最も共感したのはプロダクト設計の裏にある哲学です。

セキュリティという分野の特性上、類似するサービスは使用者に高度な知識やリテラシーを要求します。一方でCloudbaseでは徹底して「簡単なUI/UXを追求する」ことに努めています。高度なセキュリティ人材でなくても、一般的なコンピュータリテラシーさえあれば、潜んでいたリスクを自分たちで解消していけるような導線となっています。

(cloudbase.ink より引用)

過去に「動画編集ができなくてもプロ並みの動画が作れるアプリ」のAI・アルゴリズム研究やUI/UX設計で起業した経験もあり、このような「従来専門知識を必要としていた工程をテクノロジーによって簡易化する」領域は、実は自分の得意分野だったりします。

www.ipa.go.jp

また、国内に留まらず今後は海外で戦っていけるような「熱狂的なプロダクト」にするにはまだまだ乗り越えなければならない壁があり、岩佐とお話するうちに、自分の得意分野がチームに価値をもたらすと確信し転職を決めました。

入社後の感想

入社して1ヶ月強ほど経ちました。

ここまでに、クエリを書いて定量的なユーザ分析を行い、簡易なダッシュボードを作成して数値を見ながら意思決定ができるような環境を整えました。同時にお客さまへの理解を深め定性的な感覚を掴むために、数社の既存のお客さまにユーザーヒアリングをさせて頂きました。 これらの定量・定性的な調査を元にNSM (North Star Metric) を設計し、データドリブンなユーザーグロースを行っていけるような文化作りの形成に着手しているところです。

エンジニア組織の観点では、毎月約1名づつエンジニアが増えてきており、開発速度を保ったまま人数をスケールさせていけるような組織作りの議論をしています。 このような組織作りの議論に今まで参加してこなかったために、個人的には興味深いです。 現在のフェーズでは、ドメイン境界を敷いてチームを区切ることをせず緩いギルド的なグループを複数形成し、EM・PjMを配置しない代わりに各個人が1エピック分をまるっとオーナーを持って高速に実装を進めれるような体制になっています。全員で10名強の小さなスタートアップですが、メルカリ・サイバーエージェントDeNAリクルートを始めとしたメガベン出身者が大半を占めているためか既にドキュメント文化が浸透しており、例えば1エピックに対して仮説検証書・仕様書・Design Docをちゃんと書くなど、良いエンジニアリング文化が形成されつつあります。エンジニア組織に関する課題が発生した際に「前職ではこうしてたよ」とTipsが即座に共有されるのが面白いなぁって思って見ています。

プロダクト自体がエンジニア向けのものであることもあって、エンジニアからの機能や改善提案が重宝されるのでプロダクトの意思決定に関わりたい気持ちが強いエンジニアにはおすすめの組織になっています。また、営業やオンボーディング面談でもエンジニアの同席がほぼ必須となっており、お客さまと直接対話することが好きなエンジニアも輝ける機会が多いのかなと思います。もし興味があったらTwitter宛てにDMください。カジュアルにお話しましょう。

終わりに

Cloudbaseをグロースさせていくということが人生の大きな目標の1つになりました。

ブログは区切りとなるライフイベントがある度に更新しています。またお会いしましょう