【Oura Ring】自分の体調をSlackプロフィールに同期した話【GAS】
はじめに
こんにちは。@0meo です。
「あー、今日ぜんぜん寝てないわ〜〜。体調悪いわ〜〜〜(チラッチラッ」
ってなるときありませんか? 僕はあります。
そこで自分の体調をアッピールしていくための自動スクリプトを作成しました。
今回作成した自動スクリプトでは、Oura Ringで計測したコンディションスコアをSlackのプロフィール横に表示される絵文字に同期します。スクリプトはOSSとして公開しており、誰でも使うことができます。
使用している要素は以下の通りです。
作り方
1. Google Apps Script APIを有効にする
https://script.google.com/home/usersettings からGoogle Apps Script APIを有効にします。
2. 環境を整える
ソースコードをクローンします。
$ git clone https://github.com/meokz/oura-ring-for-slack-status.git
開発ツールをインストールし、使用するグーグルアカウントでログインします。
$ npm install -g @google/clasp
$ clasp login
プロジェクトを初期化します。
$clasp create --title OuraRingForSlackStatus --type sheets
3. デプロイする
以下のコマンドでソースコードをデプロイすることができます。
$ clasp push
デプロイが終わったことを確認したら、GASで開きましょう。
$ clasp open
このような画面を開くことができたらOKです。
Oura Ringからのデータ取得はこんな感じ
function getDailyReadiness(): DailyReadiness { const host = "https://api.ouraring.com/v2"; const start_date = Utilities.formatDate(new Date(), "Asia/Tokyo", "yyyy-MM-dd"); const end_date = Utilities.formatDate(getTomorrow(), "Asia/Tokyo", "yyyy-MM-dd"); const url = host + `/usercollection/daily_readiness?start_date=${start_date}&end_date=${end_date}`; const params: GoogleAppsScript.URL_Fetch.URLFetchRequestOptions = { method: "get", contentType: "application/json", headers: { Authorization: `Bearer ${props.OURA_RING_TOKEN}` }, }; const contents = UrlFetchApp.fetch(url, params).getContentText(); const dailyReadiness = JSON.parse(contents) as DailyReadiness; return dailyReadiness; }
Slackへのステータス反映はこんな感じです。
function updateSlackStatus(emoji: string, text: string) { const url = "https://slack.com/api/users.profile.set"; const payload = { profile: { status_emoji: emoji, status_text: text, }, }; const params: GoogleAppsScript.URL_Fetch.URLFetchRequestOptions = { method: "post", contentType: "application/json", headers: { Authorization: `Bearer ${props.SLACK_USER_OAUTH_TOKEN}` }, payload: JSON.stringify(payload), }; UrlFetchApp.fetch(url, params); }
emojiの切り替えには雑にスコアをしきい値処理します。ここは自分好みに値を変えても良いです。
function getIconNo(data: DailyReadinessData): number { if (data.score >= 85) { return 1; } else if (data.score >= 75) { return 2; } else if (data.score >= 65) { return 3; } else if (data.score >= 55) { return 4; } else { return 5; } }
3. Slackの設定をする
3.a. 絵文字を追加する
Slackに絵文字を追加します。今回使う自動スクリプトでは、スコアに対して5段階の絵文字に変換します。 1を最も良い状態、5に行くほど悪い状態だと定義したときに、それぞれ対応する絵文字を
- :condition_1:, :condition_2:, :condition_3:, :condition_4:, :condition_5:
として追加してください。
3.b. Botを作る
続いて、https://api.slack.com/ を開いて「Create an app」を選択します。
「From scratch」を選びましょう。
「App Name」に好きな文字列を入力し、導入したいワークステーションを選択してください。
「Settings」→「Basic infomation」→「Display Information」を埋めて、「Save Changes」で保存します。
「Features」→「App Home」の「Your App’s Presence in Slack」に移動し、「Edit」を押します。
適当に埋めて、「Add」を押しましょう。
3.c. Webhook URLを発行する
「Features」→「Incoming Webhooks」を開き、「Activate Incoming Webhooks」をONにします。
すると、下に「Webhook URLs for Your Workspace」というセクションが生えるので、「Add new Webhook to Workspace」を選択します。
チャンネルを選ぶ画面が出てくるので、好きなチャンネルを選びましょう。
以下の画面に出てくるWebhook URLを後で SLACK_WEBHOOK_URL
の枠にペーストします。
3.d. User OAuth Tokenを発行する
「Features」→「OAuth & Permissions」を開き、「User Token Scopes」から「Add an OAuth Scope」を選びます。
「users.profile:write」を与えましょう。
この時点でアプリの再インストールが求められるので、ボタンを押してインストールし直しましょう。
「OAuth Tokens for Your Workspace」セクションにある「User OAuth Token」の値を控えます(「Bot User OAuth Token」ではない)。
これを後で SLACK_USER_OAUTH_TOKEN
の枠にペーストします。
4. Oura Ringのトークンを取得する
https://cloud.ouraring.com/personal-access-tokens にアクセスし、「Create New Personal Access Token」を押してアクセストークンを発行します。名前は分かりやすいように「Slack Status」とでもしましょう。
発行されたトークンをコピーし、後で OURA_RING_TOKEN
の枠にペーストします。
5. 環境変数を設定し、デプロイする
GASの環境変数を設定します。「設定」→「スクリプト プロパティ」から「スクリプト プロパティを追加」を選択します。
ここでは先ほどのセクションで生成した3つの環境変数を設定します。
SLACK_WEBHOOK_URL
: Slack通知のWeb hook用URLSLACK_USER_OAUTH_TOKEN
: SlackのUser OAuthトークンOURA_RING_TOKEN
: Oura Ringのトークン
続いてAPIとして公開します。「デプロイ」→「新しいデプロイ」として、「種類の選択」で「ウェブアプリ」を選んでください。その際、アクセスできるユーザーを「全員」にします。
URLが発行されるのでコピーしましょう。 このURLを叩くことでGASスクリプトが発火され、Oura Ring APIからのデータ取得 → GASで判定ロジックが発火 → Slack APIを更新という流れが実行されます。
5. iOSでオートメーションを組む
さて、これでSlackの状態を更新できるようになりましたが、どのタイミングでAPIを叩けば良いでしょうか。 GASでスケジュールを組んで定期的にAPIを叩くことが考えられます。 しかし、ここではiOSのオートメーションで組んでみようと思います。
Oura Ring APIは、Oura Ringのモバイルアプリを開いたときに同期されます。 つまり、Oura Ringのモバイルアプリを閉じたとき、Oura Ring APIの値は最新になっているはずなのです。
「ショートカット」アプリを開き、「オートメーション」タブを開きます。そして「個人用オートメーションを作成」を押しましょう。
「新規オートメーション」から「App」を選択します。
「App」に「Oura」をセットし、「閉じている」にチェックボックスを入れます。
アクションを設定する画面になるので、「アクションを追加」します。
「URLの内容を取得」を選びます。
このようにアクションをセットできました。
URLの部分をタップして、先ほど発行したAPIのURLをペーストします。
最後に、「実行の前に尋ねる」をオフにしましょう。「実行時に通知」もオフで良いでしょう。完了を押せば設定は終わりです。
これでOuraアプリを開きデータが更新された後、アプリをバックグラウンドに移すとAPIが発火されSlackが更新されます。
使ってみる
Oura Ringのモバイルアプリを開いた後、閉じるとSlackに通知が来ているはずです。
メルカリを退職してCloudbase株式会社に転職しました
はじめに
こんにちは。 @0meo です。
2022年12月でメルカリを退職し、2023年1月よりCloudbase株式会社に転職しました。 この記事はメルカリの退職・Cloudbaseの入社エントリになります。
メルカリでやったこと
メルカリに入社するまでのお話はこちら。
1. GroundUp App プロジェクトへの参加
メルカリでの主な仕事は、メルカリアプリの0からフルスクラッチプロジェクトへの参加でした。
2年半に渡る大規模なプロジェクトのうちお手伝いさせて頂いたのは後半の半年ほどです。MAU2000万人規模の開発を行う上での組織作りや開発プロセスなど、短い時間ながら多くのことを学びました。
Design Systemを始めとした共通モジュールやアーキテクチャは既に整備されており、ほとんど土台が出来上がっていたので属人的な貢献が大きくできたわけではないのですが、歴史が長いサービスなだけあって技術負債を解消したとしても "仕様負債" が無いとは言わざるを得ませんでした。特に自分が面した問題は、単一の機能自体の仕様書があるにも関わらず、複数の機能同士が関与しあう際の仕様について統一的な文書が存在せず、かつ新たな機能が追加される際に機能数Nの指数的にコードが複雑になってしまうというものでした。これを解消するために、いくつかのチームを横断しながら仕様を紐ほどいていくことに責任を持たせて頂き、複数の機能が絡み合ったときのフローを1つの文書に整理しました。加えて、技術的にも仕様変更に強くなるようなマネージャーモジュールのPoCを作成し、アーキテクチャチームに提案させて頂きました。この過程で得られたコミュニケーションや、アーキテクチャチームの方からのコードレビューは貴重な経験になりました。
↓ 快適・高速な開発を支えるメルカリiOSのビルドシステムについて engineering.mercari.com
2. 登壇発表
@kuu に声をかけて頂き2件の登壇発表を行いました。メルカリで学んだ開発プロセスについて発表をしています。
- Android/iOSアプリを協調開発するチーム 〜スクラム開発の実践とその先へ〜, https://droidkaigi.jp/2022/timetable/363652, Droid Kaigi 2022, 2022.10.06
スライド: speakerdeck.com
- Android/iOSエンジニアがいっしょくたになって、スクラム開発をやろまい ~モバイルアプリ開発特有の改善達を添えて~, https://confengine.com/conferences/scrum-fest-mikawa-2022/proposal/17192/androidios, Scrum Fest Mikawa 2022, 2022.09.17
3. 社内ハッカソンでの優勝
メルカリでは通常業務をストップし、好きなアイディアを元に自由なアプリを作ることができる社内ハッカソンがあります。基本的にメルカリでの仕事は「競争」ではなく「強調」なのですが、唯一競争的なイベントとして個人で出場し、社員274名が参加するハッカソンで優勝に該当するGold Awardを頂きました。
自分がメルカリを使っているときの不満として、モノを売る際に郵送方法が毎回分からなくなるという問題があります。そこでiOSの3次元計測SDKをメルカリに統合し、出品物をスキャンすることで最も安い郵送方法を自動入力してくれる機能を追加しました。
(engineering.mercari.com より引用)
フルスクラッチを経たメルカリiOSでは、このような機能を爆速で作ることができます。
Cloudbaseへ
メルカリでやり残したことはまだあったと感じているのですが、Cloudbaseに強い魅力を感じて転職するに至りました。
Cloudbaseは、AWSを始めとするクラウド環境をスキャンすることで致命的なインシデントに繋がりうる設定ミスを検出し、日本語による修正ドキュメントを添えてリスクを提示してくれるサービスです。
(cloudbase.ink より引用)
たかが設定ミスと侮ることなかれ。自動車会社ホンダのインド子会社では、S3の設定を誤って「公開」にしていたために5万人以上の顧客データが流出しています。
古典的なネットワーク・アプリケーションを介した攻撃やマルウェアと異なり、このような「S3の設定に問題があった」のようなクラウド環境に起因するインシデントが増加傾向にあります。これを解決するのが CSPM (Cloud Security Posture Management) であり、Cloudbaseが提供するサービスのうちの1つです。
同じくCSPMを提供するイスラエルのWizは、2020年1月の立ち上げから既に1億ドルまで年間売上を伸ばしており、時価総額でも約8000億円に到達するなどCSPMは熱い領域であると言えます。
海外と比較すると日本のセキュリティは遅れがちと言われますが、やはりCSPMに関しても日本ではプレイヤーがほとんどいません。現代における国家間の戦争では武力行使に連動してサイバー攻撃が行われることが周知の事実となっているように、CSPMを国産として展開すること、これを普及させることによって日本全体のサイバーセキュリティを守ることには強い意義があります。
Cloudbaseはリリースからまだ1年すら経っていないにも関わらず、主にエンタープライズ向けのお客さまに多くご導入頂いており、フィードバックを頂きながらプロダクトを改善し続けているところです。
転職を決めるまで
代表の岩佐 @koyataroo とは96年生まれの同世代であり、自分が起業した2年前頃からTwitterで相互フォローして認知する関係でした。2022年の秋頃に初めてお話することになり、意気投合したのをきっかけにCloudbaseへの転職を考え始めます。
岩佐を始めとした経営陣のことが信頼できる、エンジニアが各メガベンから集まったドリームチームである、セキュリティ分野なのでエンジニアのキャリアとして無駄になりづらい、国産セキュリティサービスをやる意義がある、必ず海外に進出するという野心的な目標があるなど、様々なポジティブな理由はありますが、最も共感したのはプロダクト設計の裏にある哲学です。
セキュリティという分野の特性上、類似するサービスは使用者に高度な知識やリテラシーを要求します。一方でCloudbaseでは徹底して「簡単なUI/UXを追求する」ことに努めています。高度なセキュリティ人材でなくても、一般的なコンピュータリテラシーさえあれば、潜んでいたリスクを自分たちで解消していけるような導線となっています。
(cloudbase.ink より引用)
過去に「動画編集ができなくてもプロ並みの動画が作れるアプリ」のAI・アルゴリズム研究やUI/UX設計で起業した経験もあり、このような「従来専門知識を必要としていた工程をテクノロジーによって簡易化する」領域は、実は自分の得意分野だったりします。
また、国内に留まらず今後は海外で戦っていけるような「熱狂的なプロダクト」にするにはまだまだ乗り越えなければならない壁があり、岩佐とお話するうちに、自分の得意分野がチームに価値をもたらすと確信し転職を決めました。
入社後の感想
入社して1ヶ月強ほど経ちました。
ここまでに、クエリを書いて定量的なユーザ分析を行い、簡易なダッシュボードを作成して数値を見ながら意思決定ができるような環境を整えました。同時にお客さまへの理解を深め定性的な感覚を掴むために、数社の既存のお客さまにユーザーヒアリングをさせて頂きました。 これらの定量・定性的な調査を元にNSM (North Star Metric) を設計し、データドリブンなユーザーグロースを行っていけるような文化作りの形成に着手しているところです。
エンジニア組織の観点では、毎月約1名づつエンジニアが増えてきており、開発速度を保ったまま人数をスケールさせていけるような組織作りの議論をしています。 このような組織作りの議論に今まで参加してこなかったために、個人的には興味深いです。 現在のフェーズでは、ドメイン境界を敷いてチームを区切ることをせず緩いギルド的なグループを複数形成し、EM・PjMを配置しない代わりに各個人が1エピック分をまるっとオーナーを持って高速に実装を進めれるような体制になっています。全員で10名強の小さなスタートアップですが、メルカリ・サイバーエージェント・DeNA・リクルートを始めとしたメガベン出身者が大半を占めているためか既にドキュメント文化が浸透しており、例えば1エピックに対して仮説検証書・仕様書・Design Docをちゃんと書くなど、良いエンジニアリング文化が形成されつつあります。エンジニア組織に関する課題が発生した際に「前職ではこうしてたよ」とTipsが即座に共有されるのが面白いなぁって思って見ています。
プロダクト自体がエンジニア向けのものであることもあって、エンジニアからの機能や改善提案が重宝されるのでプロダクトの意思決定に関わりたい気持ちが強いエンジニアにはおすすめの組織になっています。また、営業やオンボーディング面談でもエンジニアの同席がほぼ必須となっており、お客さまと直接対話することが好きなエンジニアも輝ける機会が多いのかなと思います。もし興味があったらTwitter宛てにDMください。カジュアルにお話しましょう。
終わりに
Cloudbaseをグロースさせていくということが人生の大きな目標の1つになりました。
ブログは区切りとなるライフイベントがある度に更新しています。またお会いしましょう
進路と抱負
はじめに
こんにちは。@0meoです。
大学院3年、大学2年、高専5年と、気付いたら10年間も学生という身分を過ごしていました。
新年度からはメルカリのソフトウェアエンジニアとして働きます。自分の会社、契約社員、業務委託、パートタイムとこれまで様々な形態で働いてきましたが、正社員は初めてなので新鮮な気分です。新卒採用の枠組みでの入社となりますので、これで晴れて #駆け出しエンジニア*1 を名乗れるというものです。
せっかくなのでどのような意思決定のプロセスがあったかを文章に残しておこうと思います。
メルカリを選ぶまで
2022年4月から新卒入社するにあたって、2021年2月頃までに8社*2からオファーを頂きました。
自分の周りの優秀なエンジニア仲間は狙った会社を1, 2社受けて新卒内定をもらう方がほとんどなのですが、自分は多めに受けた中から絞り込んでいく意思決定のプロセスを大事にしたいと決めていました。企業に対する志望度は選考を受けている途中に第一志望が最下位、あるいは最下位が第一志望に変わるほど大きく振れますし、企業間で相対的なものでもあります。何より自分自身の考え方自体も変化し、気づかなかった自分に気付くことさえあります。そういった背景でいくつかの選択肢を頂いたのですが、同時に過去に就職と進学の選択肢で悩んだときと同じくらい、人生で最も悩みました。
2019年の学部での就活、2017年の高専での就活は以下のような点を重視していたと記憶しています。
- 組織の技術力の高さ
- プロダクトの社会的貢献度
- エンジニアに与えられる裁量
今回の就活でもこれらの重要性は変わってないものの、一方でこれらの条件を満たした企業の選考を受けているというフィルターがかかるので、頂いたオファーのうちどれを選択するかという意思決定のプロセスにはほとんど影響しませんでした。
一方で、最も意思決定に影響を及ぼした変数は何だったかというと、人事の方々の対応でした。例えば、『自分から応募する気持ちすらなく仲介人の紹介で選考に乗ったが、人事の方の手厚いフォローによって最終的にメルカリと並んで最後の2択まで悩むことになった』『幼かった頃から働くことを思い描いていた企業だったが、合否の連絡が指定された期限よりも4ヶ月も遅れて来た』『第一志望で最も早く内定をもらっていたが、内定通知書がいつまでも送られてこず、不安になって他の会社の選考を増やした結果、より自分に合う企業が見つかってしまった』などのケースがありました。ちなみにメルカリの場合も最初の志望度は低かったのですが最終面談で上がりました。
さて、技術力やプロダクト、裁量では比較検討がしづらいとお話しましたが、そんな中で自分が新たに採用した指標は「自分がどれだけ事業に貢献できるかと、事業がどれだけ自分に成長の機会を与えてくれるかという2変数を最大化する」というものでした。これは、事業に貢献できるロールやドメインは比較的成長の余地がなく、一方で事業に貢献できないロールやドメインは成長の余地はあるもののストレスが多くなる、というトレードオフを鑑みてのことです。冒頭で述べた通り、自分は今までにいくつかの業務形態でエンジニアとして働いてきましたが、成長の機会のみを重視し結果的にストレスを抱えて潰れてしまうことが多く、反対に成長のない現場で飽きを感じた経験もあったことから、今回はそのトレードオフを考慮してみようという試みでした。これとは別に、今後のキャリア、リモート有無、オフィスの場所、求められるロールなど細かい指標を並べて二次元表を作ってみましたが、単純比較のできないカオスなエクセルができあがってしまっただけだったので、この指標はかなり意思決定に役に立ちました。
結果として、事業に貢献できることと成長の機会を両立できると(現時点の情報で)推察したメルカリが残りました。ソフトウェアエンジニアとして最低限のスキルセットを持っていて、自身でスマホアプリのサービス運営の経験があるためチームに貢献はできるはず、一方でコミュニケーションの公用語(英語)はネイティブレベルとは程遠いので成長しかない、といった具合です。また、メルカリ規模のサービスでのプロダクト施策に関して学べる余地があればと期待しています。PdMのロールではないものの、今後はプロダクトの施策に積極的に関わっていきたいと考えています。
2021年秋に1月半ほど配属先のチームでインターンをしましたがこの推察は概ね合ってるのではないかと思っています。何よりインターン中のチームの皆さんのことが大好きになったので、4月から一緒に働けることを心待ちにしています。
↓2017年のインターンの様子。2017年のインターン生の同期はもうほとんどメルカリを離れているので、それもなにか新鮮な気持ちがします
今後のこと
最後に少し今後のことについて語りたいと思います。
2017年の大学に入って1年目時点の記事では、以下の3点をやりたいこととして掲げていました。
SIGGRAPHは以前の記事で述べたので省略しますが、一番難しいだろうなぁと思っていた未踏では、スーパークリエータを頂き、その後の未踏アドバンスドにも採択されました。論文を書く研究インターンに参加するについては、サイバーエージェントのAILabで2ヶ月間お世話になりました。広告の自動生成技術の一要素について研究し、JSAI 2021で発表させて頂きました。AILabには素晴らしい研究者の方々が揃っており、研究者として生きていくのであれば間違いなく最高の選択肢の1つだと思います。研究成果とその社会実装もクールで、非常におすすめです。
目標を達成できたのは喜ばしい一方で、どうも特に未踏アドバンスド後は燃え尽き症候群のようなガス欠感が1年以上続いており、どうしたものかと悩んでいます。この2年くらい、自分で会社をやってみて、様々な施策を打った結果多くの学習があった一方、自身のビジネス力やマーケティング力には欠如を感じました。会社や個人事業主での受託あるいは自社サービスで売上を上げるという体験を積むことはできましたがスケール可能ではないという点で大きく自分の力不足を感じます。
次の10年くらいは、「スケール可能な事業を作る」を目標に、直近は自分に不足している領域を学習する機会としていきたいです。本業とは別に、副業で自分の会社と個人事業は続けていくので、楽しそうな仕事があったら声をかけてください。
大学院に行った方がいいですか?に対するアンサー
大学院に行ったほうがいいですか?
就活系のイベントで登壇すると必ずと言っていいほど「大学院って行ったほうがいいんですか?」と聞かれます。「自分自身が行きたいと思ったら行けばいいし、不要だと思うなら行かないでいいのでは」が回答なのですが、そういえば自分も大学入学前には似たような悩み事をしていたなぁ、いろんな立場の方々に聞いて回ったな、と思ったので自分が確かに実感できたメリットをまとめてみます。
- 研究のプロトコルを習得できた
ある分野に関心を寄せ、関連研究をサーベイして自分の中で体系化し、その中からまだ発掘されていない鉱山を見つけ、実際に掘ってみて、出てきたお宝を評価し、分野外の人にも分かりやすいよう報告する一連の流れを身につけることができます。IFの高いジャーナルや著名な学会に通ったとかそういう結果は二の次で(もちろんあればいいですが)、その後に研究を続ける続けないに関わらず、この能力を身に付けることができたのは財産です。例えば学部1年生から指導教官の元で研究をしているようであれば問題ないと思いますが、多くの大学生が研究する期間である1年では不十分だと感じます。
- 一次文献を読む能力とその大切さを身に付けた
SNS上で見かける陰謀論者が想像以上に多く存在することにげんなりするこの頃ですが、自分自身がメディアに出たりSNSでバズる中で、情報というものは2次3次と誰かに伝わっていくたびに歪曲し、どれだけメディアが恣意的な発信をしないよう心がけたとしても意図しないものに変化する生き物であると感じました。例えば、自分のサービスや研究がメディアに取り上げられるとき、一定の制限やトレードオフがあるにも関わらず、露出する際はメリットばかり強調して伝えられます。メディアが視聴者の興味を引きつけPVを稼ぐように設計されていることを考慮すると当然のことで悪いこととは思いません。一方で、メディアが発信する情報に最初から間違いが含まれることもあります。ここ最近で最もげんなりしたものは、「NFTはAIが作ったディープフェイクを見破れる!」という紹介がニュース番組でなされていたときでした。
大学院で求められることは論文を読むこと、つまり一次情報に触れることです。論文を読む能力は多少の訓練が必要であり、それが必須である環境に身を置くことで一次情報にアクセスできる力を身につけることができます。これは自分の分野外で特に有効で、判断が難しい社会的なIssue(疫病、戦争、エネルギー問題など)に直面し意見を考える必要のあるときに大いに役立っています。
- 最前線の研究者との議論できた
指導教官、共同研究室の学生、あるいは外部の共同研究者や学会で会った方々など、最前線の研究者の方々と毎日議論を重ねることができたのは大きな福利厚生だなと思います。これも専門分野に限った話ではありません。ラボ生活内では研究の話と直接関係のない新規サービスの議論もよくで行っていましたが、やはり博士号持ちや博士課程の先輩方からのアドバイスは聡明で貴重でした。一定、生存者バイアスが働いているのはあるでしょうが、やはり日頃から論理的な議論を積み重ねてきた方々とお話させて頂けることは刺激になります。
このようにメリットを上げてみると共通項が見えます。それは、大学院できちんと研究をするということは、その分野のスペシャリストになれるという点だけでなく、分野外にも応用できるジェネラルな能力が身につくのだということです。
最後に
ここで勘違いしてはいけないことは、大学院に行くことで得られる経験と、就活をする上で有利になるかどうかを混同してはいけないことです。大学院に行くことで得られる経験は、述べてきたように人生を生きていく上で重要なものも含まれるでしょうから、それを得た人間が就活において高く評価されるのは当然です。しかし、大学院に行かなくても就活上での適切な能力を備えている人はいますし、反対に大学院に行ったからといって真摯に取り組まなければ無駄に2年分歳をとった新卒ができあがるだけです。繰り返しますが、「自分自身が行きたいと思ったら行けばいいし、不要だと思うなら行かないでいい」がアンサーです。
デジタルなネイチャーな1年半
この記事は mast Another Advent Calendar 23日目の記事です。
adventar.org
22日目の記事はあつしもりさんの『僕がEOS Rを選んだ理由』でした。
はじめに
こんにちは,@0meoです。 今年もAdvent Calandarの季節がやってきました。 他の方の記事を読むのはもちろんのこと,定期的に自分の感情や考えを自然言語に落とし込んでインターネットの海にアウトプットする機会として毎年とても楽しみにしています。
去年のAdvent Calandarでは「なんやかんやで内々定辞退したあとのこと」から「実際に大学に編入した直後くらい」の時系列を記事にしていました。 meokz.hatenablog.com
この記事では,その続編として,大学の卒業研究の配属先であるデジタルネイチャー研究室に配属されてからの1年半を振り返ってみたいと思います。
続きを読む内々定辞退してそれから
この記事はmast Advent Calander 2017 14日目の記事です。
13日目は「あら、私の神!」でした。
https://note.mu/mths/n/nab35e49c408enote.mu
はじめに
こんにちは。@0MeOです。 「就活と進学をした高専生の話」(長文注意)で書いたように, 某企業から頂いた内々定を辞退して,筑波大学の編入試験に合格しました。 その後の話をゆるゆるっと書いていきたいと思います。 今回も長文ですのでごゆっくりお付き合いください。
長いので読まなくて大丈夫なのですが, 2016年8月に書いた上記の記事でやりたいことを列挙していました。
- 関東で学生をしたい
- 関東で就活をしたい
- 学生として海外に行きたい(留学, 学会)
- 学生として高専生以外の人達と接したい
- 学生コンテストに出たい
- いろいろな会社にインターンに行きたい
- 逆求人にあと2回はでたい
というモチベーションの元,どれだけ達成されているか振り返ってみましょう。 インターン先の企業さんの名前出させて頂いていますが,問題があれば報告してください。
続きを読むメルカリのBOLD INTERNSHIP in USAに参加した話
参加したというかまだインターンは終わってませんが、メルカリのBOLD INTERNSHIP in USAの一環でアメリカに1週間行ってきました。
インターンの内容についてはURL先の通りです。
「メルカリがアメリカで戦うためのアイデア考える」というMissionと「メルカリ及びCtoCサービスのユーザーヒアリングと改善提案」というCurriculumは指定されているものの、調査する内容や方法、提出するアウトプットの形式、渡米する日付や現地での過ごし方など一切指定されていません。全部、自分で1から考えて行動するというめっちゃBoldなインターンとなっています。
メルカリには調査した内容をちゃんとまとめて提出しますが、このインターンにはMissonの他に「学生に自分の目と足で世界を知ってほしい」という主催者の思惑があり、ただ、提出する資料に個人的に感じたことをつらつらと書くわけにもいかないので、お礼の意味も込めてこのブログに書いてみたいと思います。あくまでも日記の立ち位置でご覧ください。
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