デジタルなネイチャーな1年半

この記事は mast Another Advent Calendar 23日目の記事です。
adventar.org

22日目の記事はあつしもりさんの『僕がEOS Rを選んだ理由』でした。

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僕も最近カメラを買いました

はじめに

こんにちわ,@0meoです。 今年もAdvent Calandarの季節がやってきました。 他の方の記事を読むのはもちろんのこと,定期的に自分の感情や考えを自然言語に落とし込んでインターネットの海にアウトプットする機会として毎年とても楽しみにしています。

去年のAdvent Calandarでは「なんやかんやで内々定辞退したあとのこと」から「実際に大学に編入した直後くらい」の時系列を記事にしていました。 meokz.hatenablog.com

この記事では,その続編として,大学の卒業研究の配属先であるデジタルネイチャー研究室に配属されてからの1年半を振り返ってみたいと思います。

自分の文脈にとらわれないことをする

大学に編入した当初「残りの学部2年間で何をするか,何ができるか」ということを考えました。 いろいろな思考があったものの結論として,学部生の間は「自分の文脈にとらわれないことをする」「自分らしくないことでもブレーキを壊してやってみる」ということでいろんなことに挑戦していくようにしています。

唐突ですが,僕は自分の過去の作品について,作品単体としてみたときの面白さと,作品群としてみたときの文脈を自分の言葉で語ることができます。

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1つ1つが独立した作品に見えますが,僕の意識の中ではある作品とある作品は深さ方向に親子関係を持っていたり,横方向に兄弟関係を持っていたりして,作品群によるネットワークが構築されています。新しい作品を作るときには,構築されたネットワークによる文脈に従ってアイディアが出てきます。

以前まで

「あー,この作品,すごく君っぽいね」

と言われることが多々ありました。称賛の意なのか嫌味で言われているのかはともかく,僕はこの言葉を言われることが嬉しいです。自分が手がけた作品に自分らしさが存在するということは誇らしいことだと思っています。

しかし,遙か先に続く長い人生を見据えたとき,自分の文脈という限られた世界の中から次の作品を生み出し続けることに疑問が湧いてきました。作品に自分らしさが出るまでアウトプットを続けてきましたが,大学生という柔軟な思考回路が残る中で"自分らしい"を固めてしまうのはもったいない。歳をとっていくにつれて自分らしい作品なんていくらでも作ることができるけど,自分らしくない作品を作ることは難しい。

若いうちは自分にはないものを一杯吸収したいと考えました。 そこで,デジタルネイチャー研究室で過ごす学部生の間は,一旦自分の中の文脈を空にし「自分の哲学なき実装」を許すことにしました。 自分っぽいもの・自分がやりそうなこと・自分の思想がはいったことは一旦捨て,他人の哲学や文脈にそった創作活動をしながら自分の中では別のブランチとして成果を残す。そして,学部生が終わる頃にもう一度自分のマスターブランチにマージすることで,"自分らしさ"を再構築したいと思いました。

1年目春 (学部3年)

最初に大量のインプットをしました。

研究室に入るきっかけとなった,FTMAという授業で鬼コースを取りました。 高専時代の研究室で1年半の間に英語購読の授業を通じて読んだ英語論文はたったの5本。この授業では1ヶ月の間に10倍の50本の論文を読みました。

www.slideshare.net

そんな中で僕は光学の分野に飛び込んでいきます。 僕は中学生から今に至る6, 7年の間,情報工学に親しんできました。プログラミングやWeb開発,ソフトウェア工学などが得意分野で,情報工学の世界でご飯を食べていくだけのスキルを持っています。 逆に光学に関しては中学生のときにレンズの虚像を作図したのが最後というレベルでした。

今考えてもよく分野転換に踏み切れたなと思うのですが,記事を書いていて思い出したボス(@ochyai)の印象的な言葉があります。

情報工学の人は光のことなんて考えないけど,光で解ける情報の問題は多い。逆に情報で解ける光の問題もいっぱいある。だから光をやっておくといいよ(意訳)」

ともかく授業の流れを引き継いで6月頃に正式にラボに所属することになり,研究生活が始まりました。

1年目秋

最初の研究テーマは「マイクロレンズアレイを用いた3次元ディスプレイと面対称結像光学系を組み合わせたVR/AR用のヘッドセットのための光学デザインとレンダリング手法の提案」という内容で始まりました。

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スピード感がとても早く,着手した3ヶ月後の9月にArs Electronica 2017で実機デモ展示を行いました。

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展示会場の様子。はじめての海外出張でした。

英語論文の査読が通り,11月にSIGGRAPH Aisa 2017でオーラル発表を行いました。

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SIGGRAPH Asia 2017でのオーラル発表。研究成果を英語でプレゼンするはじめての機会でし

1年目冬

Light Field Blenderの関連テーマにあたる「既存のVRヘッドセットを面対称結像光学系と組み合わせることで透過に拡張するための光学デザインの提案」という内容の研究を並列して行っていました。

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こちらは7Pの英語論文が査読に通ったので2月にAugmented Human 2018でオーラル発表を行いました。

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Augmented Human 2018での発表の様子。フルペーパーとしての研究成果発表は国内外合わせてはじめて。

2年目春 (学部4年生)

学部4年生になりました。 4P以上の英語論文が通らなくて苦しんでいた時期でした。

僕はこの時期あたりまで研究室内で採択を目指している国際会議のほぼ全てに論文を書いており,複数のプロジェクトを並列で抱えていました。つまり表に出ている以上の作業量があって,身体にはかなり負荷をかけていました。

身体的な部分だけならまだなんとかなるものの,成果が出ないことと,忙しすぎてインプットする時間が取れないこと,自分のやりたくない仕事が大量に増えたという精神的な側面が加わって病みました。たぶん最後が一番大きくて,「既に120%くらいのキャパで働いているところにモチベの沸かないけどやらないとまずい新規の仕事が延々と降ってくる」という状況がとどめを指し,ちょうど1年たった6月頃に「あ,むり,限界だ」となりました。

パンクしてしまったものはしょうがないので,全部シャットダウンして頑張ることを止めました。 ここからの僕はアウトプットを緩やかにして,今にいたるまで専門分野の勉強時間を増やすなどのインプットを多めに取るようにシフトしていきました。

2年目夏

落合先生との共同プロジェクト「面対称結像光学系を用いた網膜プロジェクター」がやっとお披露目になりました。 情熱大陸の頃からやっていたプロジェクトですので,一般公開までちょうど一年といったところです。

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デモンストレーション展示を8月にSIGGRAPH 2018でおこないました。

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SIGGRAPH2018デモ展示のExperience Presentationの様子

2年目冬

今の研究室のテーマではありませんが,高専の頃の研究がInivite Talkに選ばれたので,IDW 2018にて招待講演を行いました。

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IDW2018での招待講演の様子

そして今に至る

常に炎上し続ける1年半でした。 まだまだ未熟で足りないことが多く,自己嫌悪を感じることも自信がなくなることもたまにありますが, まとめてみると学部生にしては頑張って発表ができたかなと思います。 英語で研究発表をさせて頂く機会が4回もあり,だいぶ英語で発表することに抵抗がなくなってきました。 不思議なもので「自分らしくない」ことでもやり続けていると,周りから見たら「僕らしい」ものに見えるようになっていくんだなということが実感できたのも気づきです。

とはいえ,冒頭でも述べたとおり,この1年半は哲学なき実装を意識してやっていたので,逆に言えばあまり個々のプロジェクトに思い入れがなかったりします。あくまで僕は種の部分を大きくしただけに過ぎないので,自分の代表作として紹介することようなこともほぼありません。今のやり方は一旦ここまでにして,修士課程からは今のやり方を通じて得られた貴重な経験を元に,次への方向転換ができていければいいなと思います。

補足

途中仕事が忙しくて病んでしまったのですが, ちゃんと補足すると今は状況が改善されて自分のモチベのあることに対してコミットメントできる環境でかつ自分のキャパ範囲内でやらせてもらっています。 良い意味で1日中ずっと研究室にいる生活にも復帰しています。 (悪い意味→精神的に病んで休みたいのに締め切り等によって研究室に幽閉されるの状態。良い意味→適度に休暇も取れて研究へのモチベが湧いているので自主的に研究室にこもって研究している状態)

mast Advent Calendar

今年のmast Advent Calendarはなんと1枚目が全部埋まり2枚目があります。 1日に2つ記事を読めるなんてお得ですね。

👇 1枚目はこちら adventar.org

👇 2枚目はこちら adventar.org

ちなみにこの記事は2枚目のものですが,1枚目の今日の日付に相当する記事は同じくデジタルネイチャー研究室で同級生の鈴木一平くんが担当です。

1heisuzuki.hatenablog.jp

そちらもぜひ!